研究概要 |
(1)Alのない原構造と,今までに見出した構造因子の相関確立 Al導入前の構造を調べ,SiOHAlユニットを囲む三角形の中心間距離・平面角はほぼ保存されていることがわかった.つまり結晶構造に由来する幾何的な要因はこれら距離・平面角に現れており,これがゼオライトの酸強度を制御する本質的な因子であることがわかった. (2)構造因子間の力学的関係のまとめ 縦方向のねじれはAlOSi角度を決め,これはOH結合の強さを決める.これらは異なる性質で,違った働きをすることがわかった. (3)多くのゼオライト構造への展開 アルミノシリケートのSTFなど20種類ほど,SAPOに適用した.またMOR, NWW, MFI, BEA, FAU, CHAの重要なゼオライトについては理論的に可能な全サイトの計算を行い,酸強度の制御因子を確立した. 以上を総合し,つぎの結論を得た. ・ゼオライトの酸強度は結晶構造と酸点の位置によって大きく変化し,これらによって決まる. ・酸強度を直接制御しているのはルイス酸性AlによるOHの電子の求引である. ・AlOHSiユニットが幾何学的な効果によって横から押されるとAlO距離が縮み,酸強度が強くなる. ・横からの圧縮力はAlOHSiユニットを囲む左右それぞれ3つずつのOからなる三角形の中心間距離・平面角を指標として表すことができる. ・これらの距離・平面角はほぼ幾何学的に決まっており,正確な計算を行わなくても結晶構造から求められる. ・これらの距離(b)・平面角(ω)と酸強度の定量的関係を確立したので,未知のゼオライトの酸強度を予測できる.具体的には,アンモニア吸着エネルギー(kJ mol^<-1>)は394-58b(A)-0.79ω(degree)である. ・赤外吸収波数などOH結合強度を表すパラメータは酸強度とは独立で,AlOSi角度の影響を強く受ける.
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