研究概要 |
本研究では、冬虫夏草菌による薬理活性物質"コルジセピン"の大量生産法の確立を目的として、まず、野生株Cordyceps militarisの菌糸体にイオンビームを照射し、突然変異を誘発させ、続いて、コルジセピン高生産株のスクリーニングを行った。さらに、得られたコルジセピン高生産株に対する最適培地条件の検討を行った。その結果を以下に示す。 1.Cordyceps militaris野生株への600および800グレイのプロトンビーム照射により変異を誘発し、照射菌株から8-アザアデニン耐性菌、8-アザグアニン耐性菌株を分離 2.得られた8-アザグアニン耐性菌の中から、コルジセピン高生産株を選別(G81-3株と命名) 3.実験計画法の適用により、コルジセピン高生産株(G81-3)に対する培地条件の最適化を行い、コルジセピン生産量6.8g/1を実現(培地条件:酵母エキス93.8g/L、グルコース86.2g/L) コルジセピンは、冬虫夏草の有効成分の中でも特に注目されている、抗菌・抗腫瘍・転移抑制作用を持つ物質(HIV感染症、白血病治療薬としてフェーズIIIの段階)であり、医薬品への利用が大いに期待されている。天然物由来のものには供給量に限りがあるため、現在、人工培養による生産研究が盛んに行われている。これまでに報告されている最大のコルジセピン生産量は、当研究室で行われた野生株Cordyceps militarisの培養によるもので、2,5g/1であった。本研究の成果はこの値を大きく上回るものである。
|