ダイオキシン類などの環境汚染物質の新たな処理方法として、白色腐朽菌、あるいは白色腐朽菌が生産するリグニン分解酵素を利用したバイオレメディェーションが期待されている。このため、国内外で多くの研究が進められているが、現在まで実用化には至っていない。この原因としては、分解酵素生産性の高い優良株が得られていないことや、効率の良い培養方法が見出されていないことが挙げられる。 このため本研究では、白色腐朽菌の増殖形態とマンガンペルオキシダーゼの生産性との関係について明らかにし、増殖形態の制御により実用レベルの酵素生産性を達成することを目的として検討を進めた。具体的には、菌体の増殖形態(平均径や密度、粒径分布)とマンガンペルオキシダーゼ生産性及びRNAの発現量との関係について検討した。菌体が形成するペレットの径は、培養初期に大きく、培養が進むにつれて小さくなり培養終期ではほぼ一定であった。一方、ペレット数は培養が進むにつれて増加し、これに伴ってマンガンペルオキシダーゼ活性も上昇することが分かった。また、ペレット経は振盪速度が高くなるほど小さくなるが、150rpm以上ではほぼ一定値となり、マンガンペルオキシダーゼ活性にも大きな違いは見られなかった。これらの結果から、マンガンペルオキシダーゼの生産にはペレット経の制御が重要であることが明らかとなった。さらに蛍光染料を用いてRNA発現量を測定したところ、培養初期に高く中期以降ではほぼ一定の値となることが明らかとなった。現在、マンガンペルオキシダーゼをコードするmRNAを定量するためのPCR条件を検討しているところである。
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