ダイオキシン類などの環境汚染物質の処理方法、あるいはセルロース系バイオマスの前処理方法として、白色腐朽菌、あるいは白色腐朽菌が生産するリグニン分解酵素の利用が期待されている。このため、国内外で多くの研究が進められているが、現在まで実用化には至っていない。この原因としては、分解酵素生産性の高い優良株が得られていないことや、効率の良い培養方法が見出されていないことが挙げられる。 本研究では、白色腐朽菌の増殖形態とマンガンペルオキシダーゼ(MnP)の生産性との関係について明らかにし、増殖形態の制御により実用レベルの酵素生産性を達成することを目的として検討を進めた。今年度は様々な培養条件におけるMnP生産量とMnP遺伝子の発現量の関係について検討した。振盪培養において振盪速度の影響50-150rpmの範囲で検討したところ、MnP生産量は150rpmで最も高くなった。一方、得られるペレットの直径については、50rpmでは12~13mm程度、100rpmでは0.7mm程度、150rpmでは0.5mm程度となり、振盪速度が高くなるほど小さくなる傾向にあったが、100rpmと150rpmの差はそれほど大きくなかった。しかし、ペレット数は150rpmでは100rpmの1.5倍程度に増えていたことから、MnP生産量の違いは有効に働く菌体量の違いによるものと考えられた。そこで、これらの菌糸体のMnP遺伝子の発現量をrealtime RT-PCRで定量したところ、100rpmと150rpmで培養した菌体ではほぼ同程度であり、50rpmだけがこれらの1/3程度に低下していた。以上の結果より、ペレット径が一定以下の場合に、MnP遺伝子の発現量が高くなり、MnP生産量が高くなることが明らかとなった。
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