1.簡易的な細胞増殖モニタリング法の開発(電気伝導度を指標としたオンライン計測) 凝集しやすい細胞形態の細胞について、培養液中の総イオン取り込み量(電気伝導度)に基づいた細胞濃度の簡易測定法を検討した。細胞の糖代謝挙動が異なると細胞のイオン取り込み量と細胞増殖量に誤差が生じるが、概ね乾燥重量法と相関が得られたことから、オンライン計測の可能性が示された。初年度検討した濁度法と合わせて、細胞の種類によって3つの方法を使い分けることが有効であることがわかった。 2.赤外分光法による培養液中糖濃度の同時計測法の開発(検量式の作成) 炭素源としてよく用いられるグルコース、フルクトース、スクロース以外に、マンノース、ガラクトース、マルトースの糖水溶液の赤外分光スペクトルを測定して各糖由来情報の特長を把握した。さらに、タバコ細胞培養中の培養液糖濃度を経時的にHPLCにより測定し、同時に得た培養液の赤外スペクトルから濃度推定するための検量式を得た。すなわち、スペクトル解析による糖代謝挙動の把握が可能となり、実験の省力化とともにプロセス管理のためのツールとしての有効性も示された。 3.糖代謝の速度論的解析(細胞の状態、増殖形態と糖代謝挙動、異なる植物細胞、異なる糖の場合) 上記2の検量式を得るための培養結果について、ロジスティック関数フィッティングと時間軸の無次元化による糖代謝挙動の速度論的解析を行った。主にタバコ細胞を用いた解析を行い、糖の種類の違いは細胞の増殖・糖代謝の速度論的な挙動の違いとして現れることがわかった。でんぷん由来の糖は主にグルコース単糖として問題ないが、他のバイオマス由来の糖をいくつかの糖の混合物であると仮定した場合、2つ以上の糖の混合物が炭素源として存在する場合の挙動も把握することが望ましい。
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