研究課題
妊娠診断薬、インフルエンザ迅速診断薬として用いられているイムノクロマト法を用いてだ液中のストレスマーカーであるs-IgAを検出する場合、希釈液として高濃度(1-25%)の非イオン界面活性剤を用いることにより、より高感度にs-IgAが検出可能である結果が得られている。そこで、歯周病マーカーとしても利用されているだ液中のヘモグロビン、スギ花粉によるアレルギーの検出用の血清中のIgE、前立腺癌マーカーである血清中のPSA(前立腺特異抗原)に関して希釈溶液または展開溶液に非イオン性界面活性剤を含んだ溶液を用いて検討を行った。また、ヘモグロビンの検出に関しては、陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、陽イオン性活性剤(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム)を用いた希釈溶液の感度への影響の検討を行なった。だ液中のヘモグロビン、血清中のIgEに関しては、s-IgA同様に非イオン性界面活性剤を用いることによって高感度に測定が可能であることが分かった。しかしながら、血清中のPSAに関しては、感度の向上は認められなかった。非イオン性界面活性剤を高濃度で用いた場合は、測定対象であるs-IgA、ヘモグロビン、IgEが存在しないコントロールでもバックグラウンドが現れるが、PSAでは見られなかった。また、ヘモグロビンの検出において、だ液の希釈に陰イオン性界面活性剤、陽イオン性活性剤を用いたところ高感度に検出することは、困難であった。これは、金ナノ粒子への抗体の標識、分散に寄与する陽イオン、陰イオンに特異的に界面活性剤が作用すること、非イオン界面活性剤に比べタンパク質への変性作用の強さが大きいことが原因であると考えられる。測定対象に対して本手法が適用できる場合、イムノクロマト法の高感度化が可能であり、測定時間の短縮、測定対象の拡大と非常に有効であると考えられる。
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