研究概要 |
テストパイロットの機能を実現する飛行制御則は従来の自動飛行装置などで採用されている線形制御理論に依拠する手法では導くことができない.機体の特性モデルを内蔵してそのデータを利用しながらリアルタイムで制御コマンドを生成する柔軟な制御が必要である.モデルデータを利用する代表的な手法であるダイナミックインバージョンと,人間の操作および判断に近い制御構造をもつ階層構造化を組み合わせた「階層構造化ダイナミックインバージョン飛行制御則」を昨年度に提案し,いくつかの機体モデルを用いて基礎的な線形解析と6自由度シミコーレションにより妥当性を確認した. テストパイロットの機能を実現する制御則は非線形制御となるので評価法が実用化の鍵を握る.モデル誤差を考慮した飛行シミュレーションと統計的な評価方法が有効である.JAXAにおいて開発された無人機の統計的評価ツールを利用し,本年度は実用化の確実な可能性の検討を実施した.従来の方法を利用して設計した制御則と同等かそれ以上の性能を有する制御則を,従来の設計手法に比べてきわめて少ない数のパラメタを調節するだけで得られることを示した.制御則は機体の特性を推定する機能やパラメタを自動調節する機能を比較的容易に組み込むことが可能であり,適応・学習能力を持ったテストパイロットの実現に有望である.今後,自動調節の機能を研究することによって,テストパイロットの実現の基礎とすることができる. 成果は計測自動制御学会誌,米国航空宇宙学会の航法誘導制御講演会おける論文発表各1件において発表した.国内の講演会において2件の口頭発表も行った.
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