研究概要 |
本研究は,これまで有効な解決策が無かった月・惑星着陸機の夜間保温方法に対し,太陽光周期加熱環境を利用したスマートかつ現実的な熱制御手法を提案,実証することを目的とする。本年度は,昨年度開発したループヒートパイプの高性能化と月面・地下環境を模擬した実験システムの構築,ならびにレゴリスシュミラントの熱物性計測を中心に行った。以下に本年度成果を示す。 ● 昨年度までに構築した月面・地下環境模擬システムにおいて,良好な真空度を得ることができなかった。スヌープ検査およびリーク検査により,原因が熱電対および電源ケーブルからのリークおよび真空ポンプの汚染であることを同定し,改修を図った。 ● 宇宙環境用ループヒートパイプを試作した。コンデンサを展開ラジエータによるふく射放熱方式とし,蒸気管,液管にフレキシブルパイプを導入した。次に,模擬実験システムにより性能評価を行い,熱輸送性,熱応答特性を明らかにした。また,リザーバ制御による温度制御性の確認を行い,安定した動作温度制御が可能であることが示された。 ● 月面模擬環境を実現するために,レゴリスの熱物性データと加熱周期からレゴリス内部の温度変化,温度分布を予測した。また,アポロ15での温度実測データとの比較を行い,概ね良好な一致を得た。また,レゴリスシュミラントの放射率を明らかにするため,熱電対とサーモグラフィとの温度を一致させることで放射率の温度依存性を計測した。その結果,放射率は0.8程度であることが明らかとなった。また,得られた熱物性データをもとに加熱周期,温度振幅を見積もり,最終的な実験条件を決定した。
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