本研究は、ライダー(Lidar)手法を用いて海洋生物群の偏光散乱及び蛍光を観測するシステムを提案し、可能性を評価することを目的とする。今年度実施した研究の成果は以下である。 1.懸濁粒子の偏光散乱画像を観測して偏光特性をMueller Matrixで表示した。サイズ(球形)の影響は偏光の平行、交差項に明瞭に示された。理論値と比較すると2回の散乱過程計算で画像パターンの特徴を推定できる事が分かった。 2.同上の観測で、粒子の光学活性度の影響がMueller Matrixの要素(M14、M41)に明瞭に示された。この画像に及ぼす溶液の光学活性度(グルコース)の影響を調べたところ、大きな影響は与えていないことが示された。詳細を検討中である。 3.海洋計測は変化の速い現象を対象とするためパルスレーザを用いた後方散乱を計測する手法が有効である。変化する偏光状態を瞬時に捉えるため4channel同時観測システムを作り実験を行った。画像歪み修正用プログラムを作成し、画像間の演算処理精度向上を図った。 4.このシステムを評価するには偏光を考慮した散乱理論および水中背景光の評価が必要となる。このため、モンテカルロ・シミュレーションを含むプログラムを作成し、計測結果と比較・検討中である。 今後、散乱体および水質に関する資料の充実を図り、ライダーの計測パラメータ(ビーム広角、視野角、水面反射、水中減衰)が信号のS/Nに及ぼす効果を評価するとともに精度向上と適用範囲の拡大を図る。
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