温暖化対策としてCO_2を海底下地中帯水層に隔離する方法においてはCO_2ハイドレートの生成領域に該当するためCO_2圧入貯留の際、ハイドレート膜の生成によりCO_2の円滑な流動拡散が阻害される懸念がある。さらに、ハイドレート乖離温度近傍で貯留を行う場合には、この温度領域で確認されているハイドレート膜の強度異常(突出して強くなる)がCO_2の流動拡散に影響を与える可能性がある。そこで、解離温度近傍でのハイドレート成膜メカニズムを解明すると共に、膜の強度異常がCO_2の流動拡散に与える影響を評価すことが重要である。まず本研究では、ハイドレート成膜メカニズムを解明するため、乖離温度近傍でのCO_2ハイドレート膜周囲の流れ場の条件が、ハイドレート膜厚に与える影響を実験的に明らかにする。そこで、当該年度においては既存の膜厚計測実験装置に、流れ場を作り出す高圧回流源を付加するため、装置の設計・製作を新たに行った。さらに、今後実験を通して得られる膜厚データと比較検討するため、物質移動に基づくハイドレート膜モデルを構築し、解析的にハイドレート膜の周囲を流れる水の流速が、ハイドレート膜厚に与える影響を評価した。これにより、圧力6MPa、温度4.6℃(乖離温度ではない)、流速1〜10cm/sの条件では、流速が増加するにつれて膜厚が減少する結果を得た。また、本実験装置の大きさを考慮した体系において、初期値に上記で算出した各流速での膜厚値を用いることで、膜厚の時系列変化を予測する計算を行った。これにより、時間の経過と共に膜厚がオーダーで増加することを確認した。その際、ハイドレート膜の周囲を流れる水の流速が増加するにつれて、膜厚増加の進行が速いことを確認した。これらの計算結果は、実験的に膜厚を計測する際に、時間のファクターを考慮する必要があることを示すものである。
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