研究概要 |
コスト的にもマンパワー的にもメンテナンスおよび状態監視が行き届いていない漁船機関を対象とした状態監視システムの開発を目的としている.具体的には運転中に漁船機関から発する超音波振動を非接触状態にて計測し潤滑油性状の劣化推定さらに低周波振動を基に機関に高負荷が作用する危険なトルクリッチ状態を容易かつ高精度に推定するシステムの開発を行う.既存漁船に本システムを導入することで潤滑油性状および高負荷状態の状態監視が容易かつ確実となり適切な保全時期の決定,さらに運転条件を修正し機関負荷を低減することにより燃料消費量の改善,船体抵抗の予測,燃焼状態を良好に保て無駄を省いた省エネ・省人・省力型漁船に転換することが目的である. 平成20年度は漁船機関の初期異常の兆候検出および異常が進展した場合の特徴定量化を試みている.初期異常の兆候検出は機関損傷の予防技術に相当する.一方,異常が進展した場合の特徴定量化は機関損傷の状態監視に相当する.初期異常の兆候検出では潤滑油性状劣化に関連ある高周波数成分の検出と定量化を行っている.また機関損傷の状態監視では駆動関連の低周波成分の抽出を試みている.手法としてAE(Acoustic Emission)センサを設置した実機の4サイクルガソリン機関(以下,機関)を試験対象として用い,粘度の異なる数種類の潤滑油に金属粉を混入させ潤滑油の劣化(汚損)を区別させる.次に機関を運転させた際に得られる超音波振動データから潤滑油劣化程度と周波数領域の特徴を対応させ定量化を図った.一方,機関損傷の状態監視では機関の排気バルブの「あたり不良」検出を想定している.マイクロホンにて駆動音を測定し,線形自己回帰モデルに基づくSN比向上手法により外部雑音を低減させ状態監視に必要な駆動関連の低周波成分の抽出を試み,その効果が認められた.
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