研究概要 |
近接型AEダブレットは,波形相似なAE信号が1s程度の短い時間差で入力する現象である。近接型AEダブレットの相対震源標定は,伝播媒質に変化がないため,従来のAEダブレット/マルチプレット解析より正確である。近接型AEダブレットのP波の入力時間差はケプストラム解析より高い精度で検出できる。しかし,近接型旭ダブレットのケプストラムには,P波の入力時間差とS波の入力時間差の2つのピークがあり,その判別が難しかった。 第2S波の入力時刻より前を時間窓を使って取り出すとともに,その時間窓長を変化させてケプストラムの変化を比較して,近接型AEダブレットのP波の入力時間差を検出する時間-ケフレンシ解析を考案した。さらに,時間-ケフレンシ解析の結果の誤認識を避けるために時間-ケフレンシ解析の結果を等高線表示するプログラムを開発した。 近接型AEダブレットの入力時間差を高分解能で検出するために,FFTにより求めた対数パワースペクトルにMUSIC法を使って,ケプストラムを求める手法を考案した。そして,MUSIC法で解析する相互相関行列の次元とP波入力時間差の誤差の関係を検討した。 1993年ソルツ地熱フィールドで観測した15089個のAEを解析して,230個の近接型AEダブレットを検出した。それらを時間-ケフレンシ解析して,4観測点でP波の入力時間差を検出できた9個の相対震源を標定した。また,2005年に苫小牧勇払油ガス田で観測した3708個のAEを解析して234個の近接型AEダブレットを見つけたが,4点の観測点でP波入力時間差を検出できたイベントはなかったため,相対震源標定には至らなかった。
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