地層汚染の原因である有害元素のうち、汚染土壌中の多種有害陰イオンを同時かつ高効率に吸着・固定できる安価な新規無機吸着材を創製することを目的に、Mg-Al系、Zn(Mn)-Fe系で、結晶子サイズを20mm以下に調整した層状複水酸化物(LDH)を合成した。 結晶子サイズを20mm以下に調整すると結晶の破壊原子価面が有効となり、比表面積が有意に増大し、イオン選択性が少なくなることで、セレン、六価クロム、ヒ素、ホウ素、フッ素、亜硝酸イオン等の陰イオンについて、混合溶液や、2000mg/L程度までの硫酸イオンや塩化物イオンの共存下においても、対象イオンを全て吸着固定でき、環境基準以下の濃度まで容易に抑制できることが示された。とくにZn-Fe系のZn端成分に近いところでは、結晶層間に突出したZn04四面体によるブリッジ構造を有するシモンコライト型物質を選択的に生成し、この物質は六価クロムイオンに対して選択性が認められた。 これらの素材は、低品位の軽焼マグネシウム、硫酸バンド、水酸化鉄などの安価で比較的大量に産生される原料から容易に合成できることが示された。 また、加熱処理と溶液処理の組み合わせにより吸着イオンを回収し、再構築法によって、ほぼ95%に近いイオン吸着・交換性を有する元のLDHへ再生できることが示された。脱着させた対象イオンは、数10mg/Lに濃縮される。:実際に、各種事業所の排水処理施設から提供された実廃水または模擬廃水を用いて、有害イオンの吸着・固定試験を実施した結果、メッキ廃液中の六価クロムイオンや、半導体工場のフッ素廃液について2次処理工程へ組み込むことにより、現実的なシステムとコストで排水基準まで抑制できることが示された。
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