1.研究目的 北海道で毎年大量に産出する農産廃棄物系バイオマスを用い、亜臨界水処理によりバイオマスの構成成分をカスケード的に利用した微生物による有用物質生産プロセスの開発を研究目的とした。 2.実験方法 コーンコブ(スィートコーンの穂軸)及びエノキタケ廃培地を原料とし、硫酸及び亜臨界水を用いて加水分解を行った。この加水分解液に含まれる糖質を基質として酵母Candida magnoliae(FERMP-16522)および酵母Xanthophyllomyces dendrorhous(NBRC 10129)によるキシリトール及びアスタキサンチン生産を行った。 3.実験結果 バイオマスの加水分解で生成する物質を検討した結果、12個のフラン化合物及び芳香族化合物が測定され、エノキタケ廃培地加水分解液はコーンコブ加水分解液に比べて殆ど全ての物質において低いことがわかった。これより、エノキタケ廃培地加水分解液は、微生物の増殖及び発酵阻害物質の含有率が小さいと考えられる。そこで、エノキタケ廃棄物加水分解液を用いてキシリトールの微生物生産を行ったところ、活性炭を用いた発酵阻害物質の除去処理を行わずともキシリトール生産が可能で、キシリトール収率及び生産性はそれぞれ0.81(g-xylose/g-xylitol)及び0.43(g/L・h)が得られ、コーンコブ加水分解液を用いたときよりも高い値が得られた。また、昨年と同様の方法によりアスタキサンチン生産を検討したところ、エノキタケ廃培地加水分解液を原料としてもアスタキサンチンの生産が可能であることがわかった。これらのことから、エノキタケ廃培地の構成成分をカスケード的に利用することで微生物による有用物質生産が可能であうことが明らかとなった。
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