1.研究目的北海道で毎年大量に産出する農産廃棄物系バイオマスを用い、亜臨界水処理によりバイオマスの構成成分をカスケード的に利用した微生物による有用物質生産プロセスの開発を研究目的とした。 2.実験方法コーンコブ(スィートコーンの穂軸)及びきのこ廃培地を原料とし、硫酸及び亜臨界水を用いて加水分解を行った。この加水分解液に含まれる糖質を基質としてXanthophyllomyces dendrorhous(NBRC 10129)によるキシリトール及びアスタキサンチン生産を行った。 3.実験結果基質としてグルコース及びキシロースを含む混合培地を用いてX.dendrorhousによる回分培養を行った結果キシロースからキシリトール及びグルコースからアスタキサンチンの同時生産が1バッチで可能であることがわかった。また、バイオマスの加水分解条件を検討したところ、グルコース濃度71.6g/L及びキシロース濃度90.3g/Lを含む加水分解液が得られた。次に、基質濃度の影響を検討した結果、グルコースとキシロースの初発濃度が100g/Lまでのとき、キシリトールとアスタキサンチンの同時生産が可能であったが、グルコースの初発濃度の増加とともにキシリトール生産性は低下した。これは、グルコース存在下ではキシロース消費が減少することに起因する。そこで、グルコース濃度を低濃度に維持する流加培養を検討した結果、キシリトール生産性は0.10g/L・hとなり、基質消費が同量の回分培養の結果と比べて約2倍に向上した。また、アスタキサンチン濃度及び収率はそれぞれ8.0mg/L及び0.38mg/g-cellが得られた。これらのことから、バイオマスの構成成分をカスケード的に利用することで微生物による有用物質生産が可能であることが明らかとなった。
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