無極性溶媒中で生成する界面活性剤のナノサイズ分子集合体である逆ミセルを液液分配法で利用するとともに、ナノ粒子製造のためのナノ反応場として用いるための研究を行った。今年度は、昨年度に引き続き、生成したナノ粒子の精製法、逆ミセルサイズの制御法についての検討を中心に研究を進めた。洗浄用の溶媒として、アルコール類、ケトン類、エーテル類を試験し、凝集の起こりにくさから、アルコール類が最も適切であることがわかった。精製後のナノ粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観測した。また、逆ミセルのサイズ制御では、分子性抽出剤の濃度を変えるだけで逆ミセルサイズを制御できることが、様々な点で有利であることがわかった。この方法では、電解質を大量に加えることなく、逆ミセルの内核水相の大きさを制御できる(一般には、電解質の大量添加で水の活量を減少させることで、内核水相を小さくする)。また、電解質を加えると、それに伴って逆ミセル内の金属イオンの濃縮度が著しく減少してしまうという問題があるが、分子性抽出剤の濃度を変える方法では、逆ミセル内の金属イオンの濃縮度を変化させることなく、逆ミセルサイズを小さくすることができる。すなわち、ナノ粒子を生成させるのに十分な金属イオンの濃縮度を保ちながら、逆ミセルのサイズを小さくできる。ナノ粒子のサイズは、その器となる逆ミセルのサイズに依存することから、逆ミセル内の金属イオン濃度を保持しながら逆ミセルサイズを制御できることは、生成するナノ粒子のサイズを制御できるということを意味する。以上から、ナノ粒子化したい金属イオンを高選択的に抽出しながら、求めるサイズでのナノ粒子を製造できる方法の確立への見通しを得ることができた。加えて、放射線を利用した金属ナノ粒子生成における水和電子の役割についても、さらに検討を進めた。
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