照射脆化を示す中性子照射された低放射化バナジウム合金の熱処理を行い、照射硬化を低下・緩和させる健全性を回復させる最適熱処理条件を探索する。このため熱処理に伴う照射組織の回復過程と機械的性質の修復の相関性について調べ、照射による脆化・硬化などの材料劣化からの回復・修復を行う熱処理条件を予測する相関則を明らかにする。 平成21年度はATRおよびHFIRで300℃以下にて3~5dpa照射したV-4Cr-4Ti合金の室温および500℃での高温引張試験を行った。東北大金研大洗センターおよび京大原子炉実験所においてRI管理区域内において高温真空引張試験器が整備されたため、硬さ試験ではなく引張試験による照射後焼鈍熱回復試験を実施した。焼鈍は真空雰囲気で500℃および600℃で最大50時間まで行われた。500℃において2時間から20時間焼鈍を行うことにより照射硬化量に変化は見られなかったものの、最大引張強度に到達したあとの延性伸びの回復が観察され、焼鈍時間の増加とともに延性伸びの回復が観察された。50時間焼鈍では硬化量の硬化も観察され延性伸びの回復も同様に見られた。TEM観察では焼鈍による内部組織変化は大きく変化していないことから、欠陥集合体数密度・サイズ分布変化によるものではなく欠陥集合体内部の歪み状態やガス不純物の転位の固着からの脱離による欠陥集合体の運動転位に対する障害強度因子が低下などの損傷緩和が原因であることが明らかとなった。600℃の温度で2時間、あるいは500℃の温度で10~20時間の照射後焼鈍により低温照射損傷蓄積の熱回復が生じることから、核融合炉構造材料としてのバナジウム合金の照射下健全性回復手法の基礎的な指針が得られた。
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