実用炉クラスの液体壁レーザー核融合炉では1レーザーショットごとに10kg程度の液体金属(LiPb)が蒸発する。壁から蒸発した金属はエアロゾル(原子が集まった微小な粒子)を形成しながら中心で衝突し、澱みが発生する恐れがある。このとき、液体金属が析出するようであれば、次のターゲットショットが困難になる。 この蒸発ガスの挙動を研究するため、本年度は昨年度までの実験データを元にシミュレーションを中心に評価し、壁から蒸発してきたガスが炉心で衝突する所まで計算が安定に進んだ。対向してきたガスが衝突することにより直径数十センチの気体が淀んだ部分が高温になる。ここまでガスと一緒に飛んできたエアロゾルはほとんど相互作用を持つことなくこの気体が淀んだ領域を通過する。この間、周辺が高温であるため、むしろ、エアロゾルは気化して直径が小さくなる傾向があることが分かった。 対向ガス中のエアロゾルと衝突する確率も無視できる程度と考えられ、当初心配されていた多量の液体金属が析出して次のターゲットショットができなくなる懸念はないと判断される。
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