研究概要 |
磁場閉じ込め核融合研究において、周辺輸送障壁によるプラズマパラメータの改善や、それに伴う周辺局在MHDモード(ELM)によるダイバータ熱負荷の問題が、将来の実用炉のみならず実験炉であるITERにおいてさえ解決すべき喫緊の研究課題となってきた。このような研究に応えうる周辺プラズマ計測では高空間分解能が必須である。近年、米国のDIII-Dトカマクや原研のJT-60Uで、ELM制御の鍵となる周辺部の圧力駆動電流分布の測定に中性リチウムビームプローブ(LiBP)が、使われるようになってきた。電子ビーム加熱型のリチウムイオン源が開発され、10-30kV/数mAの中性ビームを用いて、周辺電流分布の初歩的なデータが得られるようになった。 研究の目的は、この計測法に使うための制御性のよい高輝度リチウムビームを開発することにある。ここでは固体熱放出型リチウムイオンソースをマイクロ波電力で加熱するという全く新しい方式により、(1)電子ビーム加熱イオン源と同等以上の輝度を持つこと、(2)加熱電源を高電圧に浮かせる必要がなく制御性のよいイオン源とすること、という特徴を持つプラズマ計測用リチウムビーム源の開発を目指す。これまでの研究で、50ミリ径のポーラスタングステンディスク(これにリチウム・ベータユークリプタイトを含浸させて用いる)を、2.45GHz/1.3kWのマイクロ波で1,200℃まで加熱できることを実証した。しかしながら、原子力研究開発機構との共同研究により、リチウムビームを高輝度化するためには従来の予想よりも高温(1,500℃程度)にまで加熱する必要があることがわかってきた。そのため、今年度は、同じマイクロ波源で、電力ロスを低減するとともに入力密度を上げ、タングステンディスクをさらに高温にすべく、断熱と冷却の改善によりチェンバーを小型化した。次年度には新しい炉で実験を行う。
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