研究概要 |
近年中性リチウムビームが、磁場閉じ込め核融合研究における周辺プラズマ計測の手段として有効であることが再認識されるようになった。本研究の最初のきっかけは、原子力研究開発機構のJT-60Uトカマクで計画された周辺プラズマ電流密度分布計測のための高輝度リチウムビーム源として、固体イオンソースのマイクロ波加熱という新しい方法を適用する可能性探ろうとするものであった。実際には開発のスケジュールを勘案して、JT-60U実験ではすでに米国で開発されていた電子ビーム加熱法を使ったイオン源の使用が決まった。しかし、マイクロ波加熱方式は、イオン源を高電圧部から切り離すことができる点や電源の制御性などに優れているため、リチウムビーム計測の応用範囲を拡大することが期待され、本研究課題による開発を継続してきた。 平成20年度末までの実験および検討から、口径を拡大した(50ミリ径)イオン源として利用するためには引出電位配分を改良することが必要と判断した。そのため平成21年度に新たに高電圧負電源(-10kV/30mA)を導入する等のイオン源電極の改造を行って、今年度のビーム引き出し実験を計画した。しかし、これまでのところ、最大1.3kW/CWのマイクロ波出力ではイオンソース部分を1,400℃以上に加熱することができず、3年間の研究計画として目標とした高輝度ビーム(10mAレベル)の引き出し実証を達成することができなかった。イオンソースへのエネルギー注入効率が最適化できていないことも大きな要因である。しかしながら、これらの実験を通して、SiCをマイクロ波吸収および発熱体とするイオンソース間接加熱方式(タングステン基盤材使用)の改良案のほか、同軸ケーブルとヘリカルアンテナを使ったイオンソース直接加熱方式(イオンソース本体材料をマイクロ波吸収体に改良)の可能性も新たに展望され、開発の方向性が見えてきたことを付記しておく。
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