研究概要 |
点欠陥生成の初期過程については、古くからはじき出しの連鎖現象が起こることが指摘され、入射粒子が材料構成原子(一次はじき出し原子:Primary Knock-on Atom, PKA)に大きいエネルギー(keV~MeV)を与えたときには、局所的に高密度の点欠陥が生成する「衝突カスケード」を生成すると考えられてきた。計算機技術と分子動力学法の発達により、はじき出し過程→冷却過程(空孔と格子間原子が再結合する過程)に至るシークエンシャルな過程が描かれ、カスケード冷却後の空孔・格子間原子の配置が計算機上で調べられるようになった。その後の照射損傷組織の発達を特徴付ける重要な情報としては、 I空孔・格子間原子のカスケード内クラスタリング II自由点欠陥生成効率 IIIクラスターの移動 が挙げられる。これらに関する分子動力学法などの計算機シミュレーションによる評価は盛んになされているが、これらの計算結果を裏付けるような十分な実験研究がなされてきたとは言えない。本研究では、空孔型欠陥にきわめて敏感な測定手法である陽電子消滅法を用いて、カスケード損傷構造を直接的に評価できる実験データを導出し、計算機シミュレーションの妥当性を検証する。
|