研究課題
圧力容器鋼の開発や寿命の評価には中性子照射または加速器を用いた重イオン照射により加速照射が行われてきた。損傷速度が損傷組織の発達に影響を与えるため、昔から損傷組織の発達の損傷速度性についても調べられてきた。しかしながら、照射温度が厳密に制御された中性子照射した試料に対して、上記のような新しい実験手法により銅のナノ析出に及ぼす損傷速度の影響についてのデータがほとんど無い。本研究では、原子炉圧力容器鋼およびそれのモデル合金に対して、損傷速度が異なる中性子照射およびライナック電子線加速器による電子線照射を行う。照射後、陽電子寿命測定法、陽電子ドップラーブロードニング法及び微小硬度計により銅のナノ析出物の形成と機械性質変化に及ぼす損傷速度の影響について調べる。平成20年度に研究炉(KUR)の運転の再開が開始されていなかったため、ライナック電子線加速器により低温100K及び高温573Kで圧力容器鋼のモデル合金Fe-0.3%CuとFe-0.6%Cuに対して電子線照射を行った。573Kで照射した合金においては、銅のナノ析出物の形成が確認された。また、低温100Kで照射した試料を液体窒素温度で等時焼鈍を行い、陽電子寿命の測定をした。いずれの合金のおいても原子空孔の移動開始温度は280Kであった。これは0.3%Cuが原子空孔をトラップすることが十分であることを示唆している。一方、773Kで100時間時効により予め銅のナノ析出物を作った両合金においては、原子空孔の移動開始温度は下がった。原子空孔の移動開始温度はFe-0.3%Cu合金において220Kで、Fe-0.6%Cu合金において240Kであった。銅の含有量が高い方が照射中に形成された銅のナノ析出物による原子空孔の移動の阻害効果が大きい。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件)
Phil. Mag. Lett. 88
ページ: 353-362
J. Nucl. Mater. 376
ページ: 133-38
J. Nucl. Mater. 377
ページ: 132-135
Appl. Sur. Sci. 255
ページ: 89-92
Materials Transactions, JIM 49
ページ: 1546-1549
Transactions of the Materials Research Society of Japan 33
ページ: 263-266