研究課題
京都大学研究用原子炉(KUR)を用いて、圧力容器鋼のモデル合金Fe-Cuに対して中性子照射を行った。照射温度は573Kで、最大照射量は0.016dpaであった。中性子照射の損傷速度はそれぞれ3.8×10^<-10>、1.5×10^<-8>と5×10^<-8>dpa/sであった。照射後、陽電子寿命測定法、陽電子ドップラーブロードニング法、微小硬度計と引張試験機により銅のナノ析出物、原子空孔集合体の形成と機械性質変化に及ぼす損傷速度の影響について調べた。陽電子ドップラーブロードニングの結果からいずれの照射においても銅のナノ析出物が形成されたことが分かった。また、銅のナノ析出物の形成は照射量との関係は単純ではなく、原子空孔集合体の形成・成長にも依存する。また、銅のナノ析出物と原子空孔集合体の形成・成長が損傷速度に影響される。銅のナノ析出物の成長は損傷速度の増加と共に増加するが、銅のナノ析出物の形成は損傷速度の減少と共に増加する。従って、圧力容器鋼の脆化が損傷速度の減少と共に顕著になる。すべての照射条件において、硬さ変化は銅濃度の高いほど大きい結果となった。また、銅濃度の高いほど損傷速度による差が大きくなっていることが分かった。これは低損傷速度において銅の析出が促進されていることを示している。引張試験の結果も硬さ実験と同様の傾向、すなわち、損傷速度の遅いほど0.2%耐力の変化が大きいと同じ照射条件では銅濃度の高いほど0.2%耐力の変化が大きいという傾向が見られる。
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