研究課題/領域番号 |
20560775
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 彰 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10403156)
|
研究分担者 |
高田 孝 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40423206)
|
キーワード | 確率論的安全評価 / 耐震安全性 / フラジリティ / 情報エントロピー / ベイズ法 / ベイズ共役関数 / 情報量規準 / 原子力プラント |
研究概要 |
地震の確率論的安全評価(SPSA)は、原子力施設の耐震安全性について総合的な性能を評価するための有効な手法である。この手法では、施設周辺にて発生する地震震度の関数で表される故障確率と定義する地震損傷度(フラジリティ)を評価し、これとシステムモデルを組み合わせることにより、地震による原子炉の事故シーケンスを定量的に評価できる。フラジリティの不確かさは、システムを構成する機器の故障メカニズム、耐震性能、および地震の応答に関する知識不足に由来する。その不確かさが大きいため必要十分な安全裕度が確保できないと考えられる場合には、評価の精度を向上させ不確かさを低減させる必要がある。その直接的な方法は、機器の耐震試験を実施し、その試験結果を反映してフラジリティ評価を行うことである。 本研究では、このような目的で実施する耐震試験の加速度レベルを最適化する手法を示した。また、耐震試験の試験結果をフラジリティ評価に反映するための数学的手法を開発した。試験結果を事後情報としたベイズ法を用いてフラジリティ評価を更新し、更新したフラジリティを用いてSPSAを実施した結果、その不確かさが小さくなったことなどから、提案した手法が有用であることが示された。ベイズ法を適用するにあたり、フラジリティモデルに使用される対数正規分布がベイズ共役関数を持っていないため、評価精度を劣化させることなく事後分布を対数正規分布へ近似する手法を示した。また、試験によって新たに得られた知見の重要性を数値化するための基準として情報エントロピーを用いた。情報エントロピーは情報の持つ価値を示し、情報エントロピーの大きさと損傷確率の不確かさの低減量は一致することが示された。結論として、情報エントロピーに基づく判断基準を用いれば、不確かさを小さくする試験条件の提案などが可能であることが確認された。
|