研究課題/領域番号 |
20560778
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
香西 直文 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (80354877)
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研究分担者 |
大貫 敏彦 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主席 (20354904)
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キーワード | 放射性廃棄物 / 地層処分 / 原生動物 / ゾウリムシ / 食物連鎖 / バクテリア / 代謝 / アクチノイド |
研究概要 |
本研究は、地層中での放射性核種移行挙動における微生物の役割解明研究として、食物連鎖末端部における重元素の化学状態遷移過程を明らかにすることを目的とする。このため、酵母など食餌となる微生物細胞にアクチノイド等重元素を吸着させ、この微生物細胞をゾウリムシが摂食・代謝・排泄する過程における重元素の化学状態を検討する。 平成22年度は、6価のアクチノイドであるU(VI)を吸着させた酵母を食餌として用いたゾウリムシ培養実験を行い、以下の知見を得た。(1)培養開始直後から増殖の定常期に至るまで、ゾウリムシ細胞内部に微量のUが取り込まれ、Uが細胞内全体に分布することがわかった。3価アクチノイドの類似元素としてのEu(III)を用いて前年度に行った同様の実験では、ゾウリムシ培養開始直後の誘導期にのみEuが細胞内部に検出されており、これらの元素に対するゾウリムシの生物的応答が異なることがわかった。(2)ゾウリムシの代謝排泄により、酵母細胞消化残滓及び残滓間の間隙を埋める膜状有機物から成る膜状沈殿物が生成した。酵母細胞消化残滓の表面にUリン酸塩の結晶が多量に存在していた。培養中に酵母から溶出したUは、培養前に酵母に吸着させたUの最大1%程度であり、ほとんどのUはリン酸塩として膜状沈殿物に移行することが示唆された。(3)ゾウリムシ培養液のサイズ排除クロマトグラフィー-ICPMS分析を行い、溶存形Uの一部は、ゾウリムシの培養開始直後からゾウリムシ由来の巨大分子との錯体を形成することがわかった。このように、ゾウリムシの生体反応及びUの化学状態遷移機構として非常に興味深い現象を見出すことができた。
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