本研究の課題は昨年度までに数10keV領域のガスイオンナノビーム形成を行い、本年度ほこれまでのまとめを行うとともに、これまでの成果を基に本研究の発展を目指して、高エネルギーナノビームを形成するための検討を行うことであった。昨年度までにガスイオンナノビーム形成装置のイオン源に仮想物点を形成するための引出し電極系を開発及び導入し、この装置を用いてビームエネルギー47keVで、ビーム径120nmの水素イオンビームを形成した。この値はこれまで得られているものよりも30%小さな値であり、これにより、仮想物点の形成と二段加速レンズ系との組み合わせによってこのレンズ系が高縮小率になることを実証できた。H22年度は、この成果のまとめを行うとともに、更なるビーム径縮小化のための検討を行った。加えて、集束プロトンビームを用いて長深度の微細加工を行う研究に本装置を使用する場合、ビームの高エネルギー化が必要なため、この装置の高エネルギー化を目指した設計研究を行った。この高エネルギー化には、二段加速レンズ系の後段に加速管を設置し、この加速管も加速レンズとして機能させる。研究では加速管をレンズとして機能させるため、加速管の長さと集束点の位置、加速電圧と縮小率、及び電極形状と収差の関係を求め、さらに耐電圧の高い絶縁物の選定を行い、これらの関係を満足させる加速管の形状を求め、加速管の設計を行った。この成果を国際会議で発表するとともに、論文発表も行った。
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