Mg複合系の水素貯蔵材料としての可能性を追求するため、MgH2を用いたナノ複合化の検討をおこなった。マグネシウムとしてMgのほかにMgH2を用いると、水素を吸蔵した状態での試料調製が可能で、Mgを用いた時と異なる複合効果が期待できる、さらにナノ構造化や複合化に伴う構造・組織変化が直に吸蔵水素に及ぼす効果を検討できることになる。 その結果、Sn/MgH2複合化系について、調製条件・方法による複合化進行の程度をTDS(熱放出スペクトル)やDSC(示差熱量分析)を用いた水素放出挙動より検討した。Sn/MgH2複合化系では、反応(1)2MgH2+Sn→Mg2Sn+2H2にともなって水素放出が進行する。ボールミリングによるナノ複合化の促進によって、顕著な水素放出過程の加速効果や低温化がみとめられた。このことに関連して、MgH2とSnを単に物理混合した系とミリング処理による複合系についてのDSCとTG(熱重量分析)結果を比較すると、ミリングに伴う複合効果が水素放出の促進や低温化に極めて有効であることが強く示唆された。物理混合系でのDSCからは、Snの503Kでの融解熱とMgH2の水素放出による吸熱ピークが見られ、Sn/MgH2複合化系のような480K付近の反応(1)による水素放出は確認できなかった。 ところで、Sn/MgH2複合化系では反応(1)に従って水素放出が起こるとすれば、放出される水素は1.6wt%となるが、実験では2.O wt%に相当する水素放出が見られ、複合化系では新たな水素の生成がある可能性も考えられる。 このような複合系には様々のタイプの水素種の存在が予想されるため、ナノコンポジット中の吸蔵水素の解明を目的に水素の状態や性質を固体NMRを用いても検討した。
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