本研究はマイクログリッド等の分散エネルギーシステム(太陽電池、風力発電、コージェネレーションシステム等)が、電力・熱配管網及び情報ネットワーク網で相互に接続され、隣接エネルギーシステム間での協調運転、エネルギー融通されることにより、一層の省エネルギーと電力品質向上を図ることが可能となるシステムの成立条件を明確にするものである。さらに都市街区内の変動していく需要や用途構成において、常に最適なエネルギーネットワークが自律的に形成・維持されていくために必要な、分散エネルギーシステムに装備すべき「分散知能(複数のエージェントの相互作用により知的処理を行う人工知能の一種)」の構築を目指すものである。これにより導入が進んでいない自然エネルギー(太陽光発電等)の大規模な導入とCO_2の一層の削減が可能となると考えられる。 平成20年度は、分散エネルギーネットワークの最適条件の導出を体系的に導出し、21年度はマルチエージェントシステムによる協調分散制御プログラムの基礎を構築した。平成22年度はこれらを継続するとともに、都市街区内の隣接するビル群において、外部環境の変化に対しても常に最適な状態を維持する汎用的な「分散知能」の可能性を検討した。具体的には、複数の分散エネルギーシステム網が、隣接システム同士で情報ネットワークにより情報通信を行い、全体でより最適な構成を導くアルゴリズムを開発した。各分散エネルギーシステムをエージェントとみなし、各エージェントが他のエージェントとの情報交換の中で、最適な相互関係を導出するものであり、さらに災害時や系統の故障などによる障害時におけるバックアップシステムとしての可能性や、エネルギーネットワーク内の障害に対するロバスト性などを考察した。
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