研究概要 |
石炭のうち,揮発成分については低温でも容易にガス化が可能であることから,本年度は全プロセスでキー技術となるチャー成分と酸素キャリアの混合で固固接触による部分酸化ガス化反応を中心にした実験的アプローチに特化して詳細に調査した.昨年度の結果を踏まえ,システムの熱バランスの優位性からCuOを酸素キャリアとして選定し,まずは二層界面の予備試験を実施した.80分間に550℃から640℃まで昇温した結果,620℃前後においてCO2濃度が最大0.3%,積算CO2量は約6mlで昨年度に比べて著しく反応性が低下し,固体接触面が黒鉛の酸化反応の重要な因子であることを裏付ける結果となった.次に,本年設計製作した反応器で,CuO,黒鉛試料の混合比,粒径,水蒸気量および投入開始温度をパラメータとして,事前に混合した試料を落下投入する試験を実施し,生成ガスの組成および発生量を測定・比較した.試料投入直後に急激で制御困難な試料温度とCO2濃度の上昇を確認,COは少なく,90%ものCO2が計測されたことから,黒鉛が完全酸化したと判断した.また,黒鉛とCuOの混合比,CuOの粒径を増大させた試験においても反応性が著しく低下したが,水蒸気増は水素生成量の増加に一定の効果があった.さらに,CO生成量の増加を目的に熱バランスでは不利なFe2O3に酸素キャリアを変更した結果,700℃でH2/CO生成量が著しく増加した.吸収材による非平衡と組み合わせればさらなる低温化も可能であることから,チャーのガス化に目処が立った.今後は2種類以上の酸素キャリアの混合も検討していく.なお,再生試験装置は,反応容器内に挿入した熱電対による温度計測と,排出ガスのガスメータによる流量測定,酸素濃度計による成分分析によりほぼリアルタイムで反応挙動を実測できるよう設計し,酸素キャリアの酸化熱で吸収材の再生を確認した.
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