本研究は、コンテンツの制作・流通・消費が繰り返し行われるというコンテンツ循環において、コンテンツの権利管理情報を矛盾なく管理するための権利継承管理モデルの確立を目的としている。コンテンツ循環では、異なるDRM(Digital Rights Management)方式を採用したサービスやアプリケーションが混在することになり、方式毎に権利管理や権利継承の内容が異なるという状況が生じる。こうした環境下で、コンテンツの権利管理状況の信頼性は、コンテンツが循環する各過程のDRM状況の信頼評価とその信頼評価情報の継承によって、コンテンツを受けとった者が評価可能になる。一方、DRMシステムの信頼性の評価基準は、評価者が求める機能や安全度の違いによって変化する。そこで、本年度は、要求に基づくDRMの段階評価手法を確立することを目的として、前年度に検討したシステムの評価指標の改良を行い、DRMシステムの利用者のニーズに基づく評価手法の提案を行った。DRMシステムの安全性の評価では、DRMシステムを構成する複数の要素技術の個々の安全強度と、それらの組み合わせにより変化する流通面や利用面の安全性の評価を定量する手法を検討した。また、これらの評価値が同じ場合でも、DRMシステムを導入するユーザのニーズによって、コンテンツ保護やライセンス管理などの機能の能力が十分な場合もあれば、十分でない場合も存在する。そこで、各者の機能面と安全面に対するニーズを段階別に分類し、この分類結果とDRMシステムの安全面と機能に対する評価から、DRMシステムの信頼性を比較評価するモデルの提案を行った。
|