研究概要 |
変異原に感受性を示す株として単離されたmus-10変異株は、ミトコンドリアDNAの欠失を伴い、早期に成長を停止する「短寿命」という形質を示す。この原因遺伝子の働きとミトコンドリアゲノム維持機構の関係を明ちかにすることが本研究の目的である。また、同様に短寿命の形質を示す、nd遺伝子、sen遺伝子のクロー二ングを目指し、これらの遺伝子の相互関係を調べ、さらに、この遺伝子翻訳物と会合するタンパク質の同定を試みる。すでにクローニングされたmus-10遺伝子のアミノ酸配列の解析により、この遺伝子がコードするMUS-10タンパク質はF-boxを含んでいた。そしてこのF-box領域の欠損により、ミトコンドリアの形状と、短寿命の形質を示す事が明らかとなった。また、ミトコンドリアの融合・分裂に関わる因子との会合が証明されたことから、mus-10遺伝子産物は、ミトコンドリアの融合・分裂に関与し、この欠損は、,何らかの作用によってミトコンドリアDNAの欠損を引き起すことが示された。 短寿命を示す他の突然変異についてもFGSC(Fungal Genetics Stock Center)より入手したノックアウト株(ハイグロマイシン耐性株)との掛け合わせにより、精密な遺伝子地図を作成し、クローニングに近づいた。これによるとこれらの変異株が相補する遣伝子は全く新規の遺伝子である可能性が非常に高い。これをもとに、次年度はゲノムライブラリーを検索、相補するDNA断片を取得することにより、クローニングをする。これらの基礎的知見を、未だに多くの未知の問題を抱えているミトコンドリア研究(ヒトのミトコンドリア病の解明など)のブレイクスルーになることが期待される。
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