研究課題
アルキル化剤であるMMSに対する高感受性株として単離されたアカパンカビのmus-10変異株は、数回の植継ぎで成長を停止し、ミトコンドリアDNAの欠失、ミトコンドリア形態異常(野生株に比べて粒状)という表現型を示す。原因遺伝子はF-boxドメインをもつタンパク質をコードしており、MUS-10タンパク質の機能にはF-boxドメインが必須であることを示してきた(Kato et al.2010)。MUS-10の機能をさらに解析するため、ミトコンドリア形態に注目し研究を行った。ミトコンドリアの分裂に必須な遺伝子であるfis-1とmus-10の二重欠損株を作製した結果、二重欠損株ではミトコンドリア形態が野生株と似た形状を示しただけでなく、変異原高感受性や生育の早期停止も見られなくなった。このことはMUS-10タンパク質がミトコンドリア形態の維持に機能することにより、変異原高感受性や短寿命を防いでいることを示唆する。MUS-10はタンパク質分解経路で働き、分解される標的タンパク質と結合することが予想される。MUS-10と既知のミトコンドリア形態制御因子との結合をみた結果、ミトコンドリアの融合に関わるFZO-1と結合することが明らかとなった。FZO-1がMUS-10の分解の標的となっているかを調べるため、二重欠損株の作製を試みたが、fzo-1欠損株を作製することが出来ず、fzo-1遺伝子は生育に必須である可能性が高い。また、mus-10変異株において、構成的なFZO-1の発現を個々見たところ、mus-10のミトコンドリア形態の異常、変異原高感受性、生育の早期停止がみられなくなった。以上より、MUS-10のミトコンドリア形態維持機構はより複雑であることが示唆される。今後はFZO-1のユビキチン化や他の標的タンパク質の探索を行うことにより、その仕組みの解明を試みる。
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Genetics
巻: 185 ページ: 1257-1269