研究課題
生殖細胞形成過程には、減数分裂前に通常の体細胞とは異なる細胞の増殖、成長がプログラムされている。これら生殖系列の細胞増殖と成長を制御する機構については不明な点が多い。本研究では、ショウジョウバエの精子幹細胞の分裂を誘導する分子機構、精母細胞の成長を制御する機構について解析を進めている。今年度は、とくに精母細胞の成長機構に重点をおいた。減数分裂開始前の成長期において精母細胞はその容積を最大25倍増加させる。これはショウジョウバエの2倍体細胞においては最大の細胞成長である。これを誘導する分子機構はわかっていない。InR突然変異体(InR^<E19>/InR^<339>)では、細胞サイズが最大になるS6期の精母細胞の直径が野生型の68%しかない。I1p2産生細胞を欠く変異体でも野生型の83%に減少していた。この結果は精母細胞の細胞成長もインスリンシグナル伝達系で誘導されていることを示唆している。体細胞では栄養状態が悪く、インスリンが誘導されない場合は転写因子Foxoが翻訳因子e1F4を抑制することにより、代謝を負に制御する。そこでInRとFoxoの2重変異体を作製し、精子幹細胞の分裂効率と精母細胞の成長を観察した。前者には有意な有意な抑圧がみられたが、後者にはそれがみられなかった。したがって、Foxoは精子幹細胞の分裂には負の調節因子として働いているが、精母細胞の成長には関与しない可能性が考えられる。InRの下流にはFoxoに依存しないRAS-MAPK経路も活性化しているので、細胞の種類によりシグナル伝達経路が異なる可能性も考えられる。また精母細胞の成長はInR変異により顕著に抑制されたわけではないので、他の経路の関与も示唆される。現在、Torシグナル伝達経路の構成因子であるTor、Tsc1、Tsc2、Rhebの突然変異、ノックダウン個体により細胞成長が影響を受けるかについて検討中である。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (31件) 図書 (1件)
Exp.Cell Res. 316
ページ: 272-285
Oncogene 29
ページ: 2060-2069
BMC Biochemistry (In press)
Biochim.Biophys.Acta. (In press)
Dev Biol 334
ページ: 186-197
Nucleic Acids Res. 37
ページ: 1423-1437
Exp.Cell Res. 315
ページ: 1403-1414
ページ: 3370-3380
EMBO J. 28
ページ: 3868-3878