研究概要 |
遺伝情報は、遺伝子の本体であるDNAからRNAに写し取られて発現する。従って、RNAの細胞内局在化は、遺伝子発現を時空間的に制御するための重要な現象である。本研究は、細胞内で局在化するRNAを網羅的に探索し、局在化に必要なRNA配列や局在化機構を明らかにすることを目的として行なわれた。 遺伝学的解析が容易で、高等動物のモデル系として優れている分裂酵母を用い、本年度は新たに2,318個(累計6,520個)のランダムなRNAを可視化して観察し、細胞内で特異的な局在を示すRNAを探索した。その結果、核内にドット状に局在するRNA候補を25個、DNA領域特異的に局在するRNA候補を5個、核小体領域特異的に局在するRNA候補を9個、新たに取得した。 また、すでに取得していた局在化RNAのうち、DNA領域に局在するF958とB1199について解析を行なった。F958の局在化に必要な175塩基のnon-coding領域が、spo_9+遺伝子の3'UTRに含まれることを突き止めた。spo_9+ mRNAには、3'UTRの長いものと短いものが1種類ずつ存在し、F958の局在配列は、このうち3'UTRの長いspo_9+ mRNAのみに含まれることがわかった。また、減数分裂の進行に伴って、3'UTRの長いspo_9+ mRNAの発現が誘導されることから、局在化配列がspo_9+の発現に対して、何らかの制御を行なう可能性が示唆された。B1199については、局在化配列を含む370塩基の領域をβ-ガラクトシダーゼ遺伝子の下流に挿入すると、β-ガラクトシダーゼ蛋白質の発現量が増加したことから、この領域が遺伝子発現を制御する能力を持つことが示唆された。
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