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2010 年度 実績報告書

蛋白質の立体構造を考慮したアミノ酸置換と自然選択圧の関係の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20570008
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

鈴木 善幸  国立遺伝学研究所, 大学院・システム自然科学研究科, 教授 (70353430)

キーワード進化 / 蛋白質 / 立体構造 / アミノ酸置換 / 自然選択
研究概要

インフルエンザウイルスは分節状のゲノムを持つため、同一の細胞に複数のウイルスが重感染するとゲノム分節単位での組換え、すなわち遺伝子再集合が起こることがある。インフルエンザウイルスは遺伝子再集合によって抗原性を大きく変化させ、世界的大流行を起こしてきた。分節状のゲノムを持つウイルスについて、進化の過程で起こった遺伝子再集合を検出するために、ゲノム配列が決定されているウイルス株からランダムに4株をサンプリングし、ゲノム分節間で系統関係を比較することを繰り返す、という方法を考案した。この方法をヒトインフルエンザウイルスに適用することにより、全てのゲノム分節間で遺伝子再集合が起こったことが明らかになった。さらに、いくつかの遺伝子再集合についてはそれが起こった時期を正確に推定することができた。
分子のレベルにおいて、進化はおもに有利な遺伝的変異の蓄積によるのか、中立な遺伝的変異の蓄積によるのかを明らかにすることは、進化学における中心課題となっている。この問題を解決するために、ゲノム配列の比較から分子のレベルに働いた自然選択圧を検出する方法が数多く開発されてきた。そこで、これらの方法を分類し、理論的基盤と問題点をまとめた総説を執筆した。さらに、集団遺伝学において、これまで正の自然選択が働いた証拠と考えられてきた観察結果も、負の自然選択が働いた証拠と考えられることを示した。
蛋白質のアミノ酸配列レベルに働く自然選択圧を検出するためには、蛋白質をコードする塩基配列の解析により同義置換速度と非同義置換速度が比較される。この比較を行うためには塩基配列間で相同なコドンを多重整列する必要があるが、コドンの多重整列はしばしばアミノ酸を用いて作成された多重整列をコドンに変換することによって行われてきた。そこで、この方法によって作成されたコドンの多重整列を用いて同義置換速度と非同義置換速度の比較を正確に行うことができるのかを検討したところ、多重整列されたコドン座位の1-9%は相同でないコドンを含んでいること、非同義置換速度/同義置換速度比が5-43%過大推定されることが明らかになった。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2011 2010

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] The neutral theory of molecular evolution in the genomic era.2010

    • 著者名/発表者名
      Masatoshi Nei
    • 雑誌名

      Annual Review of Genomics and Human Genetics

      巻: 11 ページ: 265-289

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Statistical methods for detecting natural selection from genomic data.2010

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Suzuki
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 85 ページ: 359-376

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Is positive selection responsible for the evolution of a duplicate UV-sensitive opsin gene in Heliconius butterflies?2010

    • 著者名/発表者名
      Masafumi Nozawa
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciencesof the United States of America

      巻: 107 ページ: E96

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Endogenous non-retroviral RNA virus elements in mammalian genomes.2010

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Horie
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 463 ページ: 84-87

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Low genetic diversities of rabies virus populations within different hosts in Brazil2010

    • 著者名/発表者名
      Yuki Kobayashi
    • 雑誌名

      Infection, Genetics and Evolution

      巻: 10 ページ: 278-283

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genetic evidence supports linguistic affinity of Mlabri -a hunter-gatherer group in Thailand.2010

    • 著者名/発表者名
      Shuhua Xu
    • 雑誌名

      BMC Genetics

      巻: 11 ページ: 18

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Genomic events contributing to high prevalence of amantadine-resistant influenza A/H3N2.2010

    • 著者名/発表者名
      Hassan Zaraket
    • 雑誌名

      Antiviral Therapy

      巻: 15 ページ: 307-319

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A phylogenetic approach to detecting reassortments in viruses with segmented genomes.2010

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Suzuki
    • 雑誌名

      Gene

      巻: 464 ページ: 11-16

    • 査読あり
  • [学会発表] Endogenous Borna-like N elements2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      第9回生物多様性研究センター勉強会
    • 発表場所
      名古屋市立大学
    • 年月日
      2011-03-17
  • [学会発表] Molecular evolution of influenza viruses2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      新潟大学セミナー
    • 発表場所
      新潟大学
    • 年月日
      2011-01-28
  • [学会発表] 遺伝子組み換え検出法の開発2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      食品中の病原ウイルスのリスク管理に関する研究
    • 発表場所
      国立医薬品食品衛生研究所
    • 年月日
      2011-01-26
  • [学会発表] CpG高突然変異率を考慮したアミノ酸配列レベルに働く自然選択圧検出法の開発2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      第82回日本遺伝学会大会
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2010-09-30
  • [学会発表] インフルエンザウイルスの分子進化2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      第20回日本数理生物学会大会
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2010-09-27
  • [学会発表] ゲノム進化学の新展開2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      第12回日本進化学会大会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      2010-08-13
  • [学会発表] ウイルスと遺伝学について2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      平成22年度三島商工会議所医看工連携・ミシマ定時会員総会記念講演会
    • 発表場所
      三島
    • 年月日
      2010-07-12
  • [学会発表] Natural selection operating on the influenza virus genome.2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      第24回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム
    • 発表場所
      軽井沢
    • 年月日
      2010-07-11
  • [学会発表] ノロウイルス遺伝子型分別システムの開発2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      食品中の病原ウイルスのリスク管理に関する研究
    • 発表場所
      国立医薬品食品衛生研究所
    • 年月日
      2010-06-30
  • [学会発表] 私の研究のこれまでとこれから、教育に対する考え方2010

    • 著者名/発表者名
      鈴木善幸
    • 学会等名
      名古屋市立大学セミナー
    • 発表場所
      名古屋市立大学
    • 年月日
      2010-06-17

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公開日: 2012-07-19  

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