研究課題
インフルエンザウイルスは分節状のゲノムを持つため、同一の細胞に複数のウイルスが重感染するとゲノム分節単位での組換え、すなわち遺伝子再集合が起こることがある。インフルエンザウイルスは遺伝子再集合によって抗原性を大きく変化させ、世界的大流行を起こしてきた。分節状のゲノムを持つウイルスについて、進化の過程で起こった遺伝子再集合を検出するために、ゲノム配列が決定されているウイルス株からランダムに4株をサンプリングし、ゲノム分節間で系統関係を比較することを繰り返す、という方法を考案した。この方法をヒトインフルエンザウイルスに適用することにより、全てのゲノム分節間で遺伝子再集合が起こったことが明らかになった。さらに、いくつかの遺伝子再集合についてはそれが起こった時期を正確に推定することができた。分子のレベルにおいて、進化はおもに有利な遺伝的変異の蓄積によるのか、中立な遺伝的変異の蓄積によるのかを明らかにすることは、進化学における中心課題となっている。この問題を解決するために、ゲノム配列の比較から分子のレベルに働いた自然選択圧を検出する方法が数多く開発されてきた。そこで、これらの方法を分類し、理論的基盤と問題点をまとめた総説を執筆した。さらに、集団遺伝学において、これまで正の自然選択が働いた証拠と考えられてきた観察結果も、負の自然選択が働いた証拠と考えられることを示した。蛋白質のアミノ酸配列レベルに働く自然選択圧を検出するためには、蛋白質をコードする塩基配列の解析により同義置換速度と非同義置換速度が比較される。この比較を行うためには塩基配列間で相同なコドンを多重整列する必要があるが、コドンの多重整列はしばしばアミノ酸を用いて作成された多重整列をコドンに変換することによって行われてきた。そこで、この方法によって作成されたコドンの多重整列を用いて同義置換速度と非同義置換速度の比較を正確に行うことができるのかを検討したところ、多重整列されたコドン座位の1-9%は相同でないコドンを含んでいること、非同義置換速度/同義置換速度比が5-43%過大推定されることが明らかになった。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (10件)
Annual Review of Genomics and Human Genetics
巻: 11 ページ: 265-289
Genes & Genetic Systems
巻: 85 ページ: 359-376
Proceedings of the National Academy of Sciencesof the United States of America
巻: 107 ページ: E96
Nature
巻: 463 ページ: 84-87
Infection, Genetics and Evolution
巻: 10 ページ: 278-283
BMC Genetics
巻: 11 ページ: 18
Antiviral Therapy
巻: 15 ページ: 307-319
Gene
巻: 464 ページ: 11-16