20年度は、アブラムシの性比に見られる変動が、遣伝的なものか、あるいは環境要因によるものかを明らかにするために、幹母世代から秋までクローン単位で飼育し、クローンの生み出す性比を調査した。加えて、これまで蓄積されてきたサンプルに基づいて、多くのワタムシ科アブラムシの秋の有翅型を解剖し、多くの種に関して性比データをとった。飼育実験の対象としては、性表現多型が見い出されるトドノネオオワタムシProciphllus oriensとオオヨスジワタムシTetraneura soriniを用いた。トドノネオオワタムシでは、秋の有翅型がオス+メスの有性世代を生み出すタイプと、メスのみを産出するタイプに2分されており、年によって2型の頻度は大きく変動していた。オス+メス産出型では、オス数一定則(オス数4)が成り立っていた。一方、Tetraneura soriniでは、集団中からランダムに得られたサンプルでは、オス一定則が成り立たず、個体によってオス数はばらばらであった。全くオスを生み出さないタイプから、オスのみを産出する個体まで、性比には大きなばらつきが見られた。飼育実験の結果、トドノネオオワタムシにおいては、2クローンの継続飼育に成功し、何れのクローンとも50頭以上の秋の有翅型を生み出した。解析の結果、2クローンとも、すべての個体がメス産出型であった。この結果は、性表現がクローンの性質であり、遺伝的基盤を持つことを示唆したTetraneura soriniでは、1クローンの継続飼育に成功し、この結果、クローン内でも性比が大きくばらつくことが明らかとなった。本年度の、飼育実験を通じて、クローンことの性比戦略が明らかとなり、重要な成果が得られた。
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