23年度(22年度の繰越予算)では、前年度震災の影響によって発表できなかったこれまでの研究成果を、日本昆虫学会71回大会において発表できた。またこれまでの成果を論文としてとりまとめ、Population Ecology誌に発表した。これまでの成果をとりまとめる過程で、アブラムシ類において性比をメスにより偏らせる要因に関して新しい説を着想し、展開することが出来た。アブラムシでは他の動物と異なり、メスの産出する卵サイズが、次世代のメスサイズを直接に決定する。卵に多くの資源を投資するほど、その投資は次世代のメスの産子能力を向上させる。このように、母親が有性メスに投資することは、直接、次世代のメスを有利にすることにつながり、これが「超世代効果」として息子よりも娘に対する投資を高める要因になり得ると予測した。さらに、前年度に引き続き、再度ニレイガフシアブラムシを解析し、クローンとしての性比戦略を明確にすることができた。各個体の性比戦略とクローンとしての性比戦略を比較した場合には、2つの単位間で相違が生じていたが、本種の場合、クローン単位で性比の傾向を分析する必要を強調した。クローン単位で見ると、クローンが良い資源を獲得し、多くのメンバーを産出できる場合には、そのクローンの性比はメスにより偏った。この傾向は、クローン内交配頻度と局所的配偶者競争を仮定することで説明可能であることを強調した。こうした観点で論文をとりまとめ、現在専門誌に投稿中である。
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