局所群集の動態に及ぼす、安定化メカニズムと等質化メカニズムの重要性を定量する方法を開発する。そのために今年度は野外調査と予備解析を行った。 野外調査は2002年から継続しているもので、北太平洋岸の3地域(北海道東部、北海道南西部、三陸)で、各地域に5海岸、各海岸の5岩礁を対象としている。調査間隔は約3ヵ月ごとで、群集調査方法はWootton(2005)と同じである。 予備解析は、Adlerら(2007)の方法を改変して行った。これは、優占種数種を対象に、それぞれ個体群動態と残りの種すべて(超種)の個体群動態をゴンペルツ式で表現する。そして階層ベイズモデルを用いて、安定化メカニズムと等質化メカニズムの相対的重要性を表す指数を求めるというものである。この方法を、三陸の優占種8種の5年間のデータに適用し、安定化効果のある動態モデルと安定化効果のないモデル(中立モデル)をあてはめ、DICで双方のモデルの適合の程度を比較することで、安定化効果の有効さを評価した。その結果、中立モデルより安定化モデルのほうが若干あてはまりが良い傾向が認められた。しかし、両者の差は不明瞭で、多くの場合、安定化メカニズムと等質化メカニズムの相対的重要性を表す指数は、ゼロとは有意差が認められなかった。 これらのことから、Adlerら(2007)の改法の利用可能性ついては、動態の記述モデルを変えて再度解析を試みることに若干の希望もみえるが、安定化メカニズムと等質化メカニズムの相対的重要性を評価するにはまったく別の方法を試みるべきであることがわかった。
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