本年度の実績の概要は以下の通り。 1)寄生系における空間構造を考慮した個体ベースモデルのシミュレーション解析 2次元連続空間上における寄生者と宿主の個体群動態ならびに進化動態に関する個体ベースモデルを構築した。その結果、ある条件下で、セルオートマトンならびに決定論的格子モデルでみられるスパイラル状の空間分布パターンが生じることを見いだした。人口学的確率性が無視できない個体ベースモデルにおいても同様のスパイラルが生じることは非常に興味深い。確率論的空間個体ベースモデルの成果として、樹木の病害虫伝播に関する論文を執筆し現在印刷中である。 2)連続空間・連続時間における空間ロジスティック増殖におけるモーメントダイナミクスの展開 2個体間の距離の分布に注目したモーメントダイナミクスを、トーラス(有界閉空間)において導いた。従来のモーメントダイナミクスは無限空間を想定したものであった。従来のモーメントダイナミクスで無視されていた微少項目を解析的に導出し、従来指摘されていたシミュレーション結果との不整合を解決する糸口をつかんだ。個体の出生と死亡のアルゴリズムをモーメントダイナミクスとして記述する試みにおいて一定の進展を得た。
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