研究概要 |
本年度の実績の概要は以下の通り. 1) 連続空間上の個体ベースモデルにおける空間パターン動態の解析 前年度に取り組んだ2次元連続空間上の寄生者と宿主の個体ベース個体群動態モデルは,ある条件下で寄生者と宿主の空間分布パターンが規則的ならせん模様を示す.今年度はこの様な高次の空間パターンの定量化に取り組んだ.具体的には,2個体間の距離分布のみではなく,3個体(Triplet)が示す高次モーメントに注目した空間統計学に取り組んだ.その結果,特定のスケールにおいてTripletが作る角度分布の双峰性に注目することで,らせん模様と言った帯状の空間パターンを認識可能であることを明らかにした.現在,自己空間相関と言った集中度を表す指標に加え,Triplet分布に注目した空間統計学に関する論文を取りまとめ中である. 2) 連続空間上の一般点過程としての個体の空間分布動態の解析 単純な点過程としてNeyman-Scott過程がある.この過程は,点としての個体の出生・死亡が密度非依存なルールに従う単純な過程であるが,2個対間の距離分布に関する解析的な取り扱いが可能である.近年,Neyman-Scott過程に密度依存性を取り入れる試みが幾つかなされており(Shimatani 2009),これを参考にして,2種系版のNeyman-Scott過程の解析に取り組んだ.現在密度依存性の取り組みに向けて解析を継続中である.
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