本年度の実績の概要は以下の通り 1)連続空間上の一般点過程としての高次空間モーメントに注目した空間分パターンの定量化 従来の個体分布の空間パターン(点パターン)の解析では、2個体間の距離の分布を表すペア相関関数に注目するが、2個体間に注目する方法では、帯状や螺旋と言った、より高次のパターンを定量化することはできない。本給では、3個体に注目した3点相関に関する新たな手法を開発した。3点が作る3角形の大きさ(辺の長さなど)とつぶれ具合(角度など)に注目することで、帯状や螺旋と言った高次パターンを定量化する手法を開発し、現在論文として取りまとめ中である。 2)生物個体の機械論的出生死亡移動に基づく個体群動態モデルの導出 中らの個体群動態の数理モデルの多くは、解析的に取り扱いがしやすい仮定に基づく記述モデルとしての力学系モデルである。本研究では、個体の出生死亡移動の機械論的な局所ルールに立脚した個体群動態モデルの導出を試みた。個体間の空間上局所相互作用の機械論的記述に基づくモデルを導出することで、より地に足のついた数理モデル研究が可能になる。個体数とペア相関関数との連立力学系モデルを考える事で、実証研究と直接対比可能な数理研究の礎を築いた。現在、より一般的な機械論的記述への拡張に取り組んでいる。
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