研究課題/領域番号 |
20570024
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石原 道博 大阪府立大学, 理学系研究科, 講師 (40315966)
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研究分担者 |
八木 孝司 大阪府立大学, 産学官連携機構, 教授 (80182301)
北出 理 茨城大学, 理学部, 准教授 (80302321)
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キーワード | 地理的変異 / キアゲハ / Nested clade phylogeographical analysis / ハプロタイプネットワーク / 地史 / 海峡 / 遺伝的変異 / 系統関係 |
研究概要 |
集団の分化と遺伝的浮動など過去に生物集団に起こった「歴史的・中立的」な出来事は、その生物集団内の遺伝的変異の大きさに影響を与え、その後の自然選択による進化の方向や速度に影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では、生物の生活史形質に見られる地理的変異の進化に、その生物種に起こった「歴史的・中立的」な出来事が制約としてどの程度の影響を及ぼしているかを、キアゲハを用いて明らかにしようとした。日本全国およびサハリンでキアゲハを採集し、mtDNAのNADH dehydrogenase subunit 5(ND5) gene (982bp)の配列を決定し、Nested clade phylogeographical analysisによってハプロタイプネットワークを作成した。その結果、日本周辺のキアゲハは、(サハリン)、(北海道)、(本州・九州)、(四国)の4つの集団に分かれた。ハプロタイプネットワークの階層構造と地理的情報から過去のイベントを推定したところ、これらの集団は、(サハリン・北海道)と(本州・四国・九州)の2つの集団に分かれた後に4つの集団に分かれるという津軽海峡と宗谷海峡の形成史に沿っていた。このように日本列島におけるキアゲハの遺伝的構成の違いには海峡の影響が強いことが示されたため、キアゲハのように高い移動能力を持っ昆虫種であっても集団間の遺伝的構造の違いに海峡の影響は重要と言える。昨年度にキアゲハの体サイズの可塑性に地理的変異があることが飼育実験によって明らかとなったが、次年度により多くの集団を用いて飼育実験を行い生活史形質を比較することで、海峡がこのキアゲハの地理的変異の進化にどの程度の影響を及ぼしているかが明らかになると思われる。
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