自然選択は、生物の適応的進化を説明する上で中心的な役割を果たしてきた。しかしながら、野外で実際に自然選択が働いたことを示す実例は極めて少ない。本研究では、ナミテントウの鞘翅斑紋多型における地理的勾配ならびにその年代変化を全国規模で調べ、環境変化とくに気候の温暖化との関係について調査した。本州、四国および九州のほとんどの採集地において、過去60年の間に黒化型(二紋型、四紋型、斑型)の遺伝子頻度が上昇し、非黒化型(紅型)の遺伝子頻度が低下していた。遺伝子頻度に見られた変化は、採集地に近接した気象測候所における繁殖季節の気温の上昇と呼応する傾向を示した。これらの結果は、自然選択による小進化の一例になり得るものと考えられた。
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