研究概要 |
芽胞形成水銀耐性細菌が持つ水銀耐性トランスポゾン「TnMERI1」を指標として、「TnMERI1」様のトランスポゾンを持つ細菌の分布状況を調べた。これまでの研究の知見(Narita, Matsui et al. 2004. FEMS Microbiol. Ecol. 48: 47-55.)より、この細菌が北半球の海岸あるいは河川砂に広く分布している事は観察されている。しかし全球レベルで分布しているかどうかついては、未だ明らかではなかった。そこで範囲を拡げて同菌の分布域を調べたところ、これまで見つかっていなかった南半球や高地環境の土壌からも「TnMERI1」様の配列を持つ菌が発見され、この水銀耐性トランスポゾンを持つ芽胞形成水銀耐性細菌が、全球規模で分布している可能性が示された。この事より「TnMERI1」様トランスポゾンは、遺伝子の水平伝播を介して芽胞形成水銀耐性細菌間で広く伝播されている可能性が考えられる。 「TnMERI1」様トランスポゾンはII型に区分されるトランスポゾンであり、その転移に際しては新しい挿入場所にDR配列という特徴的な配列がつくり出される。そこで見つかった菌を対象に、DR配列を解析したところ、同じ「TnMERI1」様トランスポゾンを持ちながら、DR配列が異なる菌の存在が明らかになった。このことは、芽胞形成水銀耐性細菌間で「TnMERI1」様トランスポゾンが転移した証拠であり、遺伝子の水平伝播によってトランスポゾンが伝播された一例を示している。次年度は、今回発見されたこれらの菌株を元に、野外における「TnMERI1」様トランスポゾンの転移パターンの抽出と、実験系を用いた転移実験をとり行う予定である。
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