昼行性と夜行性の淡水魚による栄養カスケードへの影響、および淡水魚オイカワの個体差が栄養カスケードに与える影響について実験を行った。実験施設として直径1.8mのビニールプールを20個用意し、水中ポンプで河川水を流入して流れをつくるとともに、水生昆虫類や底生藻類が自然増殖する系をつくった。 昼行性・夜行性実験では、昼行性の魚としてウグイ、夜行性の魚としてギバチを用い、対照区のほかウグイ区、ギバチ区、ウグイ+ギバチ区を設定した。ウグイは水面に落下する昆虫類、水中の水生昆虫類、藻類などプール各層の食物を広く摂食していたが、ギバチはもっぱら底部の水生昆虫類を捕食した。20日間の実験の後、底生藻類の著しい増加はウグイのいる区でのみ認められ、ギバチは水生昆虫類を摂食したにもかかわらず、藻類の増加をもたらさなかった。その理由として、ウグイはプールに産卵に訪れる水生昆虫の成虫をも多く捕食し、プールにおける水生昆虫類の増殖を著しく抑制したことが挙げられる。 オイカワを用いた実験では、まず予備実験を行い、オイカワをその摂餌行動からM型、W型、MW型に分けた。M型は流下物や落下物を摂食するタイプ、W型は藻類など底部の餌を摂食するタイプ、MW型は両方の行動をするタイプである。その後、無魚区、M型区、W型区、MW型区の4区を設定し、オイカワについては6尾ずつ放流した。予備実験の行動と実験プールの行動はほぼ相関した。対照区と比べてMW型区、M型区で藻類の有意な増加が認められ、M型、MW型のオイカワによって栄養カスケードが生じることが明らかになった。W型区ではオイカワが底生藻類を多く摂食したために、藻類の増加は認められなかった。以上のように、魚種や種内の個体差によって栄養カスケードの強さが異なることは新しい知見であり、底生藻類を増加させてアユなどの藻食魚の成長を高めるうえで重要である。
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