研究概要 |
実験には直径1.8mの円形プール20個を用い,水中ポンプによって流れをつくってモデル河川とした。千曲川からの河川水から水生昆虫類が流入し,プールでは底生藻類が増殖した。栄養カスケードとしては,魚類がカゲロウなどの水生昆虫を捕食することによって,水生昆虫に摂食される底生藻類を逆に増加させる正の間接効果について解析した。 第一の実験では魚種としてヤマメとカマツカを用い,処理区としてはヤマメ区(6尾),カマツカ区(6尾),両魚種区(3尾+3尾)及び魚を放流しない対照区を設けた。第二の実験ではドジョウ,ナマズ(幼魚),ギンブナを用い,それぞれを6尾ずつ放流した単独区と対照区を設定した。実験はそれぞれ20日間行なった。第一の実験では,カマツカとヤマメのどちらによっても栄養カスケードが認められたが,両魚種を比べるとカマツカによる効果の方が大きかった。第二の実験ではギンブナのみで栄養カスケードが認められた。 水路に藻類の多く付着したカワラを置き,それに対する巻貝の反応を調べた実験では,藻類の多く付着したカワラを設置後,カワニナが早い場合には30でカワラに集まり,10時間後に藻類を食べ尽くすことが明らかになった。 これらの結果から,栄養カスケードは昼行性の魚種でのみ認められ,次に水生昆虫類を主に捕食し河川の底層を動く魚種で強いことが結論づけられる。水生昆虫類や巻貝類の藻類への摂食圧はかって考えられていたより強いことが明らかになった。
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