1.野外調査:青森から四国まで全国13カ所のフナの倍数性比の調査を行った。8割近くが無性型の地域から、9割近くが有性型の地域まで様々な地域が見られ、倍数性比については地域間で大きな違いがあり、統計的にも有意にヘテロであることがわかった。来年度以降も同一地域において倍数性比の変化を調査する。 2.実験個体群:半野外および室内の実験個体群について、年に一回魚を取り上げて、個体数の推定・測定を行い、有性無性型の比率、体長・体重を測定した。得られたデータから、有性・無性型の間で増加率の違いを比較し、少数者有利の頻度依存性があるかを検証した。4年間の結果、倍数性比の初期頻度によらず、無性型の比率が増加した。最終的には、どの実験区でも無性型の比率が有性型のそれを大きく上回った。また、新規個体の加入率には無性型有性型の間での少数者有利の傾向は統計的には検出できなかった。これは、有性生殖のオスを作るコストを個体群レベルで初めて観察したものであり、実験系のスケールでは共存が困難であることを示唆している。 3.成長実験:飼育環境・発育ステージの異なる3つの実験系で、有性・無性型の体サイズを測定し餌を巡る競争下にある個体の成長の違いを検討した。半野外の実験区では2歳の個体、室内実験では、60センチ水槽と、2トン水槽で生後5ヶ月の個体の成長を調べた。分散分析と事後検定から二倍体・三倍体・四倍体(生まれた子供に四倍体がいる)の体長比較を行い、メタ・アナリシスを用いて全体の傾向を検定した結果、成長率には大きな違いはなかったが、統計的には三倍体の無性型の成長率がよかった。
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