無性型・有性型からなるフナ類の集団は同所的に共存している。この共存はパラドックスであり、その個体群動態におけるメカニズムを理解することが研究の目的である。具体的には、(1)有性無性比について野外個体群動態の長期観察を行い、有性型と無性型の間の負の頻度依存淘汰に関する検定を行うこと、(2)半野外・室内実験個体群を用いて個体群動態の長期観察を行い、共存が可能か、少数者有利の頻度依存淘汰があるのかを明らかにすることを行ってきた。今年度は、(1)野外個体群調査:引き続き調査を行い、有性無性の比率の時間変化を観察した。(2) 実験個体群:引き続き、半野外実験個体群(17ton x 8):半野外実験個体群(2ton x 7水槽)の維持と観察を続けた。(3) 共存にも関係する可能性がある遺伝システムに関連して、交配によって得られた魚のクローン性について確かめた。また、四倍体雌と四倍体雄から生まれた二倍体雌個体と通常の二倍体雄個体の交配から生まれた子供には二倍体と三倍体が含まれており、二倍体量の遺伝子を卵にもつ無性生殖の可能性が示唆された。 結論として、フナ類には雄を作る性のコストがあることをはじめて実験的に確かめることができた。実験池のスケールでは負の頻度依存性は検出されなかった。データからテストした、病気モデル・中立モデル・メタ個体群モデルは棄却された。死亡率に有性型と無性型の間で差が検出されなかったことから、野外における共存のメカニズムは出生率に関する何らかの要因であることが示唆された。
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