受精卵あるいは幹細胞の不等分裂によりさまざまな種類の細胞が生まれる。不等分裂がどのような分子機構で制御されているのかを理解することは多細胞生物の発生を理解するために重要である。後生動物におけるこれまでの研究から、不等分裂時の特定のmRNAやタンパク質の時空間的な制御機構が明らかになってきた。植物においても不等分裂はその発生に重要であるが、制御機構の全体像はまだよくわかっていない。そこで本年度は、申請者らがこれまでに同定した不等分裂候補因子の全てについて蛍光タンパク質標識を用いて可視化し、これら候補因子の不等分裂時の時空間的動態を解析した。また、候補因子の機能解析をすすめ、植物不等分裂の分子機構の全貌解明を目指した。 その結果、不等分裂制御候補遺伝子59種類の全てに対して、citrine蛍光タンパク質ノックイン安定形質転換体の作成を終了でき、それら全てに対して融合タンパク質の局在観察を行ったところ、幹細胞で顕著に蓄積するものを10種類同定できた。また、微小管や液胞膜を可視化できる形質転換株を作成し、不等分裂時のこれらオルガネラの動態変化を観察した6不等分裂にともなう液胞膜のダイナミクスな変動が観察できた。さらに幹細胞に選択的に分配された10種類の因子のうち特に注目した約半数について、それらのパラログも含めて、遺伝子破壊体あるいは多重遺伝子破壊体の作成や条件的過剰発現体を作成し機能解析を開始した。
|