研究概要 |
シロイヌナズナCYO1はProtein disulfide isomerase(PDI)活性を有する子葉特定的葉緑体形成因子である。前年までの研究によって,シロイヌナズナAt3g47650が本葉で機能するCYO1ホモログ(CYO2)であることを示した。 本年はCYO1とCYO2の葉緑体形成における機能分担を調べるために,それぞれの遺伝子発現様式を解析した。CYO1は播種後7日目のみで遺伝子発現が観察されるのに対して,CYO2は子葉を含む緑色組織全体において遺伝子発現が観察された。また,CYO1遺伝子の発現が観察されない暗所生育でもCYO2遺伝子の発現が観察された。CYO1とCYO2との酵素学的機能の違いを明らかにする事を目的として、前年までのCYO1の酵素学的解析に続いて,本年はCYO2の詳細な酵素学的解析を行った。その結果,CYO2タンパク質はCYO1同様PDI活性を有していたが,CYO1の酵素反応の至適温度が40℃であるのに対して,CYO2タンパク質は温度上昇に伴って酵素活性は上昇し,10℃~60℃の範囲では60℃で最大の酵素活性を示した。また,酵素反応の至適pHがCYO1ではpH6.7であったのに対して,CYO2ではpH5.0~9.0の範囲では反応液のpHが低いほど酵素活性が上昇しており,至適pHはpH5.0であった。 以上のことより,PDI活性を有するCYO1とCYO2は発現している植物組織の違いとともに酵素学的特徴の違いを有しており,CYO1とCYO2は子葉とそれ以外の緑色組織における葉緑体形成において機能分担していることが示唆された。
|